2018年02月15日

フル・ムーンfull moonはバイク事故のリスク?!


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「おお、漆黒の闇にひときわ輝く満月、古より人を蠱惑する中天の女神、果たして汝は真の神か、はたまた悪魔か」・・・・・・「どうかしたのか?」とのご心配はご無用です。ついに頭がおかしくなったのではありません。ブログの題材を探していて昨年末の「英国医師会雑誌のクリスマス特集(2017;359;j5367)」のfull moonとバイク(motorcycle)事故関連死亡に関する論文に“有り余る詩心???”が触発されて、ロシア・フォルマニズム(外国文学を専攻されていた方、懐かしい言葉でしょう?)の「言葉の異化作用」を実践してみただけです。

米国では何百万というバイク愛好者がいるそうですが、死亡事故も年々増加しつつあり、最近は毎年5,000人(全交通事故死亡の1/7に相当します)ほどが死亡しているそうです。バイク事故の主な原因のひとつが「一瞬の不注意・わき見」であることは異論がないでしょう。一方、full moonは漆黒の闇のなかではひときわ大きく、美しく輝くので運転中に運転者が一瞬目を奪われれても不思議ではありません。その場合、より不安定なバイクの事故が起こりやすくなる可能性は十分に考えられます。そこでカナダと米国の研究者はfull moonとそうでない夜とでバイク死亡事故の頻度に違いがあるか否かを検証しました。

あるいは同期の方々にもバイク愛好者はおられるかと思いますが、四輪自動車の方が多いだろうし、自動二輪も近場の用事とか買い物程度が多いかな・・・・・・でも場合によってはfull moonで乗り物に乗ることもあるかも知れないし、交通事故は“巻き込まれ”も稀でないので、こういう情報も知っていて損はないと思います。

さて、この研究は1975年〜2014年での13,029件/1,482夜のバイク死亡事故を対象としています。対象とした”night time”は4:00pmから翌朝の8:00amです。結果は月1回のfull moonでは4,494死亡/494夜=9.10/夜、一方、full moonでない夜では8,535死亡/988夜=8.64/夜であり、full moonでは有意差をもって死亡事故が5%増加していました。また年1回の”super moon”ともなれば、さらにリスクは高まり、なんと32%の増加となっていました。この現象は米国のみならず、英国、カナダ、豪州でも認められました。著者らはこの研究では検証できていない様々な交絡因子の存在を考慮して、やや控えめな記述をしていますが、full moonでは事故が起こり易い可能性があることを忘れず、ヘルメットの装着、バイクの整備の徹底、注意深い運転を心がけるなどの注意喚起をしています。

私はやはり月には一種独特の魔力があるように思います。werewolfすなわち狼男・人狼伝説が伝えるが如く、満月にはヒトの精神を高揚させる何かがあるかもしれません。ちょっと話は逸れますが、病院の医師には狼男はともかく、一匹狼は確かに存在します。それもひとつの病院に複数棲息しています。いわば“多発性一匹狼状態”ですね。彼らはご機嫌が悪い時には「がおっ〜」と荒れるのですが、full moonのときに特に荒れやすいか否かについては、残念ながら信頼すべきデータがありません。

話を元に戻します。full moon、super moonともなれば「輝く月に向かってぶっ飛ばそうぜ〜」という極めて高リスクなバイク野郎もいるかも知れません。そうでなくとも、“健常運転者”でも満月に一瞬目を奪われることはあり得ることです。ビルの連なりが一瞬途切れる場所、木々の隙間から月光が差し込む場所などは、とくにバイクにとってはハイリスク・ポイントになるのでしょうね。そういうところで突発的に生じる事故には、正直居合わせたくないですよね〜

やはり満月は家の窓から「月光ソナタ」でも聴きながら心静かに眺めるのが安全だと思います。しかしそのとき、突如顎が変形して、毛がみるみる伸びてメタモルフォーシス(変態)起こす・・・・・・そしてついに「がおおおおっ〜」・・・・・・なんてことはないと思いますが、万一あっても病院・診療所で対応するのは無理ですのであしからず。“フル・ムーン誘発性人狼変態”は保険適応外ですし、そもそもエクソシストの専門領域です。


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2018年02月01日

コーヒー摂取量と健康、結論はいかに?!

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2015年6月15日付のこのブログで、日本初のコーヒー摂取量と健康についての研究を紹介したのですが、その後もコーヒー摂取量と健康に関する研究論文は多数出版され、その益や害に関する意見もさまざま・・・・・・そこでより正確な結論を得るために、複数の論文のデータを統合して解析する「メタ解析」あるいは「システマティク・レビュー」という手法をとった論文も続々出版されるようになりました。「では、その更に上を行く研究を・・・・・・」となれば複数の「メタ解析」・「システマティク・レビュー」を統合した研究手法があります。これを「アンブレラ・レビュー」といいます。イメージとしては“傘解析”・・・・・・今回はコーヒーと健康に関するアンブレラ・レビュー(英国医師会雑誌2017年11月号)を紹介します。

コーヒーは世界で最も愛飲されている飲物のひとつです。ですからコーヒーが健康に何らかのインパクトを与えるのなら、たとえ個人にとっての影響はわずかでも、世界中で積算される影響は“計り知れない”とも言えます。より深い科学的検討と洞察が望まれるところですが、これは簡単ではありません。なにしろ焙煎したコーヒーに含まれる生理活性物質は何と1,000種類を超え(欧州食品研究技術誌オンライン 2014年10月)、そのいくつかの成分は抗酸化作用、抗炎症作用、抗線維化作用(線維化とは組織の炎症後などに線維芽細胞が増殖して組織が硬くなり機能障害に陥ること〜例えば肝炎後の肝硬変症など)、そして抗がん作用を持つことが知られています。

コーヒーの生理活性物質のうち、その核となるものがいくつか同定されており、カフェイン、クロロゲン酸、ジテルペン、カフェストール、カーウェオールなどが代表的成分で、それらの作用も詳細に分析されています(食物機能誌 2014年8月)。そうは言っても、コーヒーは未焙煎の生豆の状態から焙煎されることによって“化学的変容”を遂げてさまざまな生理活性を示すと考えられています。その過程は複雑で、アラビカ豆かロブスタ豆かによっても違うし、焙煎から抽出に至る方法によっても影響を受けます。生理活性がある限りは、その量によって益と害が生じる割合は異なってくると想像されますが、一定の結論を得るには、大量の文献情報をまとめて解析するしか手はありません。そこでこの「アンブレラ・レビュー」の出番ということになります。

この「アンブレラ・レビュー」の対象となった論文は201編の観察型研究と17編の介入型研究で合計76の知見が報告されていました。コーヒー摂取はおおむね益が害に勝っていて、摂取量は増えれば増えるほど、とはいえないのですが、1日3〜4杯くらいが最も益がでる可能性が高いという結論が得られました。“1日3〜4杯摂取群”と“コーヒーを全く飲まない群”とを比較すると、「すべての原因による死亡」におけるコーヒー摂取群のリスクは0.83(すなわち17%リスク減少)でした。また「心血管病による死亡」リスクは0.81、「心血管病罹患」リスクは0.85でした。がんについては「コーヒー摂取量が多い」と「少ない」群を比べると、摂取量が多い群で18%のリスク低下が認められました。その他にもコーヒー摂取はいくつかの特定のがん、パーキンソン病などの神経疾患、代謝疾患や肝疾患のリスク減少に関係しているという結果も得られました。コーヒー摂取の害については、多くの場合、喫煙という因子で補正すると影響は消失しました。

しかしコーヒーの多量摂取を絶対避けるべき状況があります。それは妊娠です。コーヒーの高容量摂取は低体重出生児や早産あるいは死産のリスクを20〜46%くらい高めるという結果が得られました。コーヒーの成分であるカフェインは妊娠中血中濃度が2倍になり、しかも胎盤を容易に通過することが知られています。おまけに胎児のカフェイン代謝活性は低いので、この結果は重要視すべきです。親しい方に対象の方がおられるなら、頭の隅に留めておいてくださいね。またコーヒー摂取は女性においては骨折リスクを高める可能性があるのですが、男性ではこの傾向は認められず、むしろ逆に骨折リスクが低下します。この点については、もうちょっとデータの積み重ねが必要かと思われます。

さて結論は・・・・・・コーヒー摂取は、妊娠など特別な状況は別にして、健康には悪くはなさそうです。益もありそうです。コーヒー好きの方は引き続き安心して飲んで頂いて良さそうです。しかし女性の骨折リスクなどまだまだ未解決の問題もあるので、コーヒーを飲まない方が、今から飲み始める必要もないと思います。「時々飲むのだけど・・・・・・」という方は、ここはじっくり考えてみてくださいね。まっ、とりあえずコーヒーを1杯淹れて・・・・・・

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2018年01月15日

飲酒と喫煙は外見を老化させる!?


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可視性年齢関連徴候、すなわち“見た目の老化徴候”は生物学的年齢に相関し、これらの早期出現は“実年齢に比べて不健康な状態にある可能性”を示唆するという考えがあります。一方、飲酒や喫煙はさまざまな加齢にも関わる疾患のリスク・ファクター(RF)であることは周知の事実です。そこでデンマークの研究者のグループは、飲酒と喫煙が“見た目の老化徴候”と関連しているか否かについて検討して「疫学と地域健康誌」2017年12月号に発表しました。

この研究の対象はコペンハーゲン在住の111,613人で研究期間は1976〜2003年、この間飲酒・喫煙の状況やその他のライフスタイルについての聞き取りを行ない、加えて“4大加齢関連徴候”を調査しています。なお週当たりの平均飲酒量は女性でグラス2.6杯、男性で11.4杯、喫煙者の割合は女性57%、男性67%でした。別の大規模疫学研究のデータを用いているので調査年代が少し古く、喫煙率は今と比べてずいぶん高めになっています。

さて、この研究で調査された“4大老化徴候”とは@角膜環(黒眼と白眼の境目にできる灰白色のリング状のゾーン、A眼瞼黄色腫(上まぶたにできる黄色の結節)、B耳たぶの深いヒダ(耳たぶの後下方に走るヒダ)〜「フランク徴候」ともいいます。@〜B、思わず鏡をみてしまいそうでしょう?C男性型禿頭〜英語ではmale pattern baldnessというのだけど、androgenetic alopeciaという言い方もあって略称AGA、こちらの方はテレビのコマーシャルで耳にしたことがあるかも・・・・・・

では、これら4徴候がRFとしてそれぞれどのように評価されているかということについてですが、@角膜輪は、男性の心臓血管病において他のRFとは独立したRFとする報告があります(米国眼科学会誌2017)。Aの眼瞼黄色腫は高脂血症、とくに高コレステロール血症との関連がよく知られているのですが、脂質異常のない人にもしばしば見られるので、健診などで脂質測定が広く行われている日本ではRFとしての価値はそれほど高くはありません。Bの耳たぶのヒダについては、脳血管障害で入院した患者さんで検討すると、一過性脳虚血より脳梗塞において、より多く見られたとする報告があります(米国内科学会誌2017)。Cの男性型禿頭については早期に始まる人では脳血管疾患やメタボリック・シンドロームのリスクが高いとのことです(ブラッド・プレッシャー誌2016)。しかし男性型禿頭は欧米人のみならず日本人でも若くてもざらにあるし、他の老化徴候とはちょっと違うような・・・・・・いずれにしても@〜Cとも、多少の報告はあるけれども、それほど強いRFではありません。

さて、デンマークの研究に話を戻します。結論として、喫煙量が増えるに従って、@〜Bの徴候が出現するリスクは増大しました。飲酒量に関しては、大量飲酒者で@とBの出現リスクが増大していましたが、少量〜中等量の飲酒は影響しませんでした。要するに、喫煙と多量の飲酒は、見た目の老化徴候を起こしやすくなる可能性があるということです。とくに「角膜輪」と「耳たぶのヒダ」とは顔の老化を特徴づける代表的な徴候だから、「やっぱり幾つになっても若く見られた方が良いな〜」と思う人は、もしスモーカーなら禁煙して、お酒も控えめにしてくださいね。「それで絶対、見た目若々しくなるの!?」と言われても困りますけど・・・・・・「タバコも吸わないし、お酒も飲まないのだけど、どうしたら良いの?」とおっしゃる方、いや〜きっと周りの人たちは、あの人若いな〜と思っていますよ〜(ちょっと無責任になっているけど)

余談ながら、予想どおり喫煙・飲酒関連老化徴候としては相関に乏しかった「男性型禿頭」だけど、イタリアのグループが2017年8月に「国際皮膚科雑誌」に「過体重と喫煙量増加が組み合わさると男性型禿頭が悪化する」という研究報告を行っていました。こちらの方は、やはり老化というよりメタボリック・シンドロームとの関連の方が深そうです。

とりあえずは、若く見えたほうが良ければ、飲酒は控えめに!・・・・・・日本の基準では「多量飲酒者」というのは1日あたり純エタノール換算で60ml(ほぼ日本酒3合またはビール中瓶3本)以上とされているのですが、ちょっと甘すぎ・・・・・・せいぜい40mlまでが無難かな〜

結局のところ“年齢を経ても見た目若々しくあるには、禁煙してお酒も控えめに”というごく常識的な結論でした。あまりにも意外性がなさ過ぎる結論ではありますが、やはり「健康に王道なし」ということでしょうね。
posted by みみずく at 19:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記