2016年12月15日

休日が続くと体重が増える問題

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私たちが若かった頃と今と比べて確実に増えたもの・・・・・“出会いと別れ”・・・・・・なかなか良いでしょう?では○ミと○ワ・・・・・・これはパス。もうひとつ、“休日の数”、これも昔に比べて確実に増えましたね。それも、やたら連休が多くなった気がします。「連休は良いけど、体重が増加するんだよな〜」という方はいますか?私は患者さんからよくこの悩み?を聞きました。「そりゃ〜大変だったですね〜(内心では連休に限ったことではないんじゃないか・・・・・・と思っていましたけど)」と返していましたけどね。この休日が続くと体重が増えるという問題、海外でも興味をひくようです。

今年の9月、フィンランドのグループが日本、米国、ドイツの三か国での連休中の体重増加についての短報を「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表しました。論文の冒頭にはこうあります。「国が異なれば祝う休日も異なる。だが変わらぬことがひとつある。休日には好きな物をたらふく食べることだ」・・・・・・彼らが注目したのは日本の5月のゴールデン・ウイーク、米国の感謝祭(11月の第4木曜)、そしてドイツのクリスマスです。また、復活祭(よく知りませんでしたが、春分の日の後の最初の満月から数えて最初の日曜とのことです)にも少し注目・・・・・・

研究方法はいかにも現代風で、スマポのアプリ(WS50 Withings)を使って2012年8月1日から2013年7月31日の1年間、2924人を対象に日々の体重変化を調査しました。対象の内訳は米国に居住する人1781人(平均年齢42.2歳、女性が34%、平均BMI 27.7、BMI 30 以上の肥満者が24%)、ドイツに居住する人760人(平均年齢42.9歳、女性34%、平均BMI 26.6 、肥満者19%)、日本に居住する人383人(平均年齢41.6歳、女性26%、平均BMI 24.7、肥満者11%)でした。体重変化は数学的・統計学的処理を加えてグラフ化し、着目した休日初日から10日以内の最高体重と休日10日前の体重を比べて増加の程度を検討しています。

さて結果ですが、どの国でも体重増加の観点からは「クリスマス〜新年」は一連の期間になるようですが、三か国すべてで、休日の前後での有意かつ顕著な体重増加がみられました(米国+0.4%、ドイツ+0.6%、日本+0.5%)。なお、この期間の最高体重は、1年の最低体重と比べると、米国で+0.6kg、ドイツで+0.8kg、日本で+0.5kgになります。やはりこのクリスマス〜新年期間の体重増加効果はmajorかつworldwideのようです。

その他国別の特徴を見てみると、日本のゴールデン・ウイークの体重増加効果は+0.3%、ドイツの復活祭は+0.2%、米国の感謝祭が+0.2%、という結果でした。また、著者らはあまり注目していないのですが、この研究で示されているグラフを見ると、日本と米独とはパターンがかなり違うことが分かります。1年間を見渡してみれば、米国はクリスマス〜新年のところに大きなピークがある一峰性のグラフ、ドイツはクリスマス〜新年のところに大きなピーク、復活祭に小さなピークがある二峰性のグラフ、ところが日本はクリスマス〜新年、ゴールデン・ウイークの他にも8月と3月に無視できないピークがあります。8月はもちろん夏期休暇ですね。3月は大型連休こそありませんが、たぶんこれは年度末なので送別会が絡んでいるように思います。

ということで、「連休は体重増加に要注意!」というのがこの論文の言わんとするところなのですが、もう少し詳しく説明しますと、連休で増えた分の半分くらいは短時間で戻せることが多いのです。問題は残りの半分、すなわち“体重の積み残し”です。なかなか体重が元に戻らないうちに次の連休がやってきて、また積み残しが・・・・・・そこへまた次の連休が・・・・・・これが積み重なると、どんどん体重が増加して・・・・・・“増加しているのに負の連鎖とはこれいかに”・・・・・・なんて言っている場合ではなくなります。

とはいえ、もうすぐ「クリスマス〜新年」がやってきます。まあ、一日や二日はおいしいもの食べなくっちゃね〜後で頑張ったら良いしね〜最後はちょっと無責任かな〜

ではみなさん、来年もお元気で!

Wish you have a Merry Christmas and a Happy New Year, and not to have weight gain!
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2016年12月01日

“5秒ルール”の真実


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世の中には本気なのか冗談なのか分からない人もいますが、研究も例外ではありません。学術研究論文の最低条件は何かと問われたら、それは「何か新しい知見(something new)があるかどうか」に尽きます。それはそうなのですが、newなら何でもありか、と言われると・・・ちょっと微妙ですね。でも今は「つまらないな〜」と思っても、単なる好みの問題かも知れないし、将来、その評価が大きく上がることがあることもあるし・・・・・・

さて、みなさんは「5秒ルール」ってご存じですか?食べ物を床に落としてもすぐに拾い上げたら(5秒以内が目安らしいです)、食べても大丈夫!という“都市伝説”です。確かに私も何度か聞いたことがあります。この5秒ルールの真相やいかに?ということを検証した論文が「応用・環境微生物学」という専門誌に掲載されました。

この研究を行ったのは、米国のニュージャージー州立ラトガーズ大学のグループです。研究方法は、あらかじめ細菌で汚染させて乾燥させた4種類の物体(ステンレス・スティール、タイル、木、カーペット)の表面に4種の食品(スイカ、パン、バターを塗ったパン、グミキャンディ)を落下させて接触させ、細菌汚染の程度を検証するものです。接触時間も1秒未満、5秒、30秒、300秒と条件を変えて実験しています。用いた細菌はエンテロバクター・アエロゲネスという細菌で、水や土壌、あるいはヒトの腸内にも棲息していて、毒性はさほど強くないけど時には肺炎や尿路感染症などを起こすことがあり、細菌で汚染された食物摂取による食中毒のモデルにはなり得ると思います。

さて、結果ですが、食物の水分が多ければ多いほど、また汚染面と食物の接触時間が長ければ長いほど、細菌汚染のリスクは上昇することが分かりました。すなわち食物のうち、最もリスクが高かったのはスイカ、最も低かったのはグミキャンディだったというわけです。そして接触時間が長いほどリスクは高いのですが、接触時間がわずか1秒未満でも汚染が成立し得ることも示されました。

「そりゃ〜そうだろう〜」と言いたくなりますが、著者らが言うには、「5秒ルールは広く世間に知れ渡っていて、接触によって細菌汚染が成立するにはある程度の接触時間が必要で、それを支持する研究も存在する」のだそうです。ですから「“伝説の5秒ルール”を科学的・実証的に検討したところに、この研究の意義がある」ということですね。そこはいちおう認めないといけないでしょう。でもなんでグミだったんだろう、ということが妙に気になるけど・・・・・・

この研究から学ぶべきことは、もちろん「5秒ルールは成立しない。落としたものは口に入れるな。でもグミなら5秒以内ならギリギリセーフ!」ではありません。落としたものはどんなものでも食べてはいけないのは当然です。スイカだろうが、グミだろうが、関係ありません。むろん黒毛和牛もアワビもアウトです。とくにお孫さんの前では厳禁です。重要なのは、「食物への接触感染は条件によっては、誇張ではなく、ほんの一瞬で成立する」という事実です。

食物によって伝播する疾患の代表的なものは食中毒です。食物由来細菌やウイルスによる急性胃腸炎ですね。発熱・悪心・嘔吐・下痢が主症状ですが、とてもしんどい病気です。とくに嘔吐・下痢というのは、1回ごとに消耗していくのがわかりますものね。ほとんどは自然に軽快しますが、健康成人ならいざ知らず、乳幼児や高齢者では危険な病気です。急性かつ高度の脱水症状はそれ自体が危険であることは言うまでもありませんが、高齢者では心筋梗塞や脳梗塞、あるいは急性腎不全の引き金になることも珍しくはありません。

落ちたものを拾って食べるのは論外として、食中毒を防ぐにはどうしたらよいか、それは子供のときにうるさく言われたように、食事前には手洗い励行が自分でできる最善かつ唯一の対策です。まあ、自分だけ頑張っても、どうしようもないことも多々あるけど・・・・・・あっ、これは細菌感染予防に限ったことではないですね。
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