2018年06月15日

睡眠不足とアルツハイマー型認知症〜たとえ一晩の徹夜でもリスクが高まる?!〜


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ご承知のとおり日本は超高齢化社会にむけて突き進んでいるところですが、いまだ有効な対策は立てられてはいません。社会の高齢化が進めば、加齢にかかわる病気の罹患率は確実に上昇します。とりわけアルツハイマー型認知症の増加は、家族、コミュニティ、医療現場、そして社会における大きな問題となると思われます。

アルツハイマー型認知症は脳内にいわば“タンパク質のゴミ”が蓄積して、神経細胞のネットワークが破壊されていく病気です。蓄積するタンパク質は大きく二種に分けられます。
ひとつはアミロイドβ(Aβ)で、もうひとつはタウ(Tau)タンパク質です。Aβは大脳皮質の神経細胞外に蓄積してアミロイド斑を形成し、一方リン酸化されたTauは神経細胞内部に蓄積し“神経原線維変性”を生じます。これらの変化は進行性で、近傍の正常神経細胞がドミノ倒しのように変性していって認知症に至るとされています。詳細なメカニズムはまだ未解明ですが、初期病変の発症・進行にかかわる可能性がある因子のひとつとして“睡眠不足や睡眠の質の悪化”が挙げられています。

現代人の多くは睡眠時間が不足しがちで、それが積み重なって“睡眠負債(sleep debt)”を背負った状態になっているといわれています。この言葉は最近とみに有名になり、2017年の流行語大賞ベスト10にも選ばれました。この睡眠負債なるもの、少々やっかいで、認知症のみならず、免疫系や神経内分泌システムにストレスとして働き、さまざまな疾患を引き起こす可能性が指摘されています。普通の負債のように、○○法律事務所に相談してもダメで、着手金無料、過払い金が戻ってくる、というわけにもいきません。仕事や生活環境を見直し、適度な午睡もとりながら生体リズムにそって規則正しい生活の中で睡眠時間を確保し睡眠負債を返済していく・・・・・・そんなこと言われなくても分かっているわ!・・・・・・ですよね〜まあ、努力目標ということで。なお“午睡”ですけれど1回30分以内なら有益とされており、1回1時間以上となれば、とくに高齢者では心血管病のリスク増大につながる可能性あり(睡眠医学レビュー誌 2017)、とのことですのでご注意下さい。

さて、話を“睡眠とアルツハイマー型認知症”の問題に絞ります。まず睡眠が認知症と、どう関連するかですが、「睡眠は脳のなかにできたゴミを脳外に運び出すのに重要な働きをしている」という動物実験(マウス)の結果があります(サイエンス誌 2013)。その後この研究結果は専門家の間で支持されつつあるようです。上述のAβもリン酸化されたTauもいわば脳内のゴミですから、睡眠が不足するとゴミがたまりやすくなり、ひいては認知症のリスクが高まる可能性はあり得ます。

ではほんとうにヒトでもマウスのように睡眠不足でゴミがたまるのでしょうか?その答えとなるかも知れない論文が最近発表されました。それによると「確かに睡眠を妨げるとAβが溜る。しかも一晩徹夜しただけでも、その分ゴミが溜る」ということが報告されました(米国アカデミー紀要 2018)。最近の脳内イメージングの進歩には目をみはるものがあり、フッ素の放射線同位元素である18Fで標識したフロルベタベンという物質を注射して、がん検診などに使うPETで撮像すれば、注射薬は脳内のAβに結合して、その分布を可視化することができます。

結果は、たった一晩徹夜するだけで、アルツハイマー型認知症の主要病変部位である海馬、海馬傍回、視床にAβの蓄積が確認されたとのことです。ただこれらのAβ蓄積部位は、慢性の睡眠不足で生じるAβの蓄積部位とは異なっているようで、アルツハイマー型認知症における意義については、まだまだこれからの検討課題ではありますが・・・・・・

さすがに60代も後半になって徹夜する人はあまりいないだろうけど・・・・・・皆さんも学生時代の麻雀(最近の若者は麻雀を知らない人も多く世代の差を実感します)、社会にでてからは夜間勤務などで徹夜した経験のある人も少なからずおられると思います。私の場合は病院の当直勤務で月数回ペース・・・・・・当直って、急患が多ければもちろん、少なくても寝られないのですよね〜

いまさら言っても仕方ないけど、当時の徹夜による睡眠負債は脳内Aβの蓄積となって、現在脳内で密かに進行しているかも・・・・・・しかも利子がついて・・・・・・願わくば、サラリー・ローンのような法外な利子は勘弁してほしいな〜そしてもう手遅れかも知れないけど、良質の睡眠をしっかりとりましょうね。





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2018年06月01日

血液型O型は重症外傷での死亡率が高い?!

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ABO血液型性格診断なるものがあります。これが根強く流布しているのは日本などアジア地域だけで、欧米などから「非科学的であるうえに、“血液型ハラスメント”の原因にもなる!」として批判されています。私もこの批判には同意しますけど、かつて大統領とファースト・レディが星占いにのめり込んでいた某国には言われたくないな〜と思うのですが……

しかし、性格はともかく、ある種の病気や病態がABO血液型と関連しているか否か?ということになれば、これは「ほぼ間違いなく関連している」と言えます。従来から血液型との関連が示唆されている疾患として、がん、感染症、虚血性心疾患、血栓症などが報告されていたのですが、今回紹介するのは血液型が重症外傷での死亡率と関連するという研究で、東京医科歯科大学からの報告です(クリティカル・ケア誌on line 2018年5月)。

さてABO血液型について、ざっくり説明しますと、すべての人(希有な例外はあるけど)は赤血球表面にH抗原を持っていて、これだけだと血液型はO型になります。このH抗原に「N-アセチルガラクトサミン」という糖が結合すればA型に、「D-ガラクトース」という糖が結合すればB型に、両方が結合すればAB型になります。これらの血液型表面抗原は赤血球のみならず、上皮細胞、血管内皮細胞、血小板などにも発現しているので、生体内で何らかの機能を担っていることは疑いなく、血液型の違いによって、その機能にも違いが現れてくる可能性は十分考えられます。

さて。東京医科歯科大学救命救急部の論文ですが、対象となった患者さんは901名で、外傷部位と程度で決まる「外傷総合重症度(1〜75点でランク付)」で>15点、すなわち入院が必要なレベルの患者さんたちです。血液型の分布はO型32%、A型32%、B型23%、AB型13%で、日本人におけるABO血液型の分布と大きくは違いません。この研究でもっともインパクトのある結果は“すべての原因による死亡率”で、O型以外の血液型での死亡率は11%であったのに対しO型では28%と、明らかに高かったのです。結果に影響を与えそうなさまざまな因子で補正しても、やはりO型は、O型以外と比較して死亡率は2.86倍高い、という結果が得られました。「えっ、ほんとに?!」と言いたくなるような差ですね・・・・・・

なぜ“O型”と“それ以外の血液型”で比べるのか、について少し補足しておきます。まずH抗原が糖で修飾されているか否か、という決定的な違いがあること、また4型に分けると、ABは少数で正確なデータが出にくいし、さらに諸外国ではAB型のみならずB型も少なくてO+Aで90%を越える国が多く、4型に分ける意味はあまりないのです。

さまざまな病気におけるO型vs非O型の違いについては以前からけっこう報告があります。簡単にまとめると、感染免疫学の視点からいえば、O型はマラリアの死亡率が低いがコレラには弱い(医学遺伝学サマリ 2012)、また、がん免疫でみれば、すい臓がんや胃がんのリスクが低いとされています(がんの疫学誌 2015)。一方、血栓・止血学からみるとO型は出血のリスクが高いが深部静脈血栓症や虚血性心疾患のリスクは低いと報告されています(止血と血栓セミナー誌 2012, 2013)。要するに血栓・止血の観点からいえば“O型は血液が固まりにくい”と解釈できます。

今回の救急医学領域のO型の死亡率上昇も、易出血性の観点から議論がされています(ただ輸血量でみると差はないようですが)。確かにO型は非O型に比べると、出血に対応する防御機能である止血システムの初期段階で重要な役割を果す「フォン・ビレブランド因子」の量が25〜30%ほど低く、この因子と密接に関連する凝固第[因子活性(この因子が先天的に欠乏している病気が「血友病A」です)も低いことが知られています。今後さらに洗練されたデザインでの追試が必要ですが、論文の著者らも外傷での死亡率の高さは“O型が出血しやすい”ことに関連していると考えているようです。

ということで、いちおうO型のみなさんは、交通事故などにはくれぐれも気をつけてくださいね。「どう気をつけたら良いのか?」というご質問に答えるとしたら……そうですね〜フォン・ビレブランド因子の量が25〜30%ほど低いので……非O型の人より30〜40%ほどよけいに注意するのが良いかと……ちょっといいかげん過ぎるかな〜

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