2015年04月01日

「がんが自然に治る生き方」がベストセラーに?!


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最近全米で大ベストセラー になった本があります。題名は”Radical Remission: Surviving Cancer Against ALL Odds.「劇的な寛解:崖っ淵から生還したがん患者」という感じかなあ・・“寛解”とは病気の徴候が完全に消失すること・・いちおう“再発”の可能性を留保する言葉です。この本の邦訳もでていて訳本の題名は「がんが自然に治る生き方」となっています。副題には「余命宣告から“劇的な寛解”に至った人たちが実践している9つのこと」・・実際には“がんの寛解”というより“がんの自然治癒”について書かれたものなのです。

原著者はケリー・ターナー博士。カリフォルニア大学バークレー校・統合腫瘍学の研究者です。彼女の研究に至った経緯は・・ “以前から時にがんが自然に治る人がいることが知られていた(これはそのとおりです)”“しかし誰もそのエピソードを検討しようとしていない(そんなことはないのですけど・・)”・・そこで彼女は自然治癒1,000例以上の論文に目を通し、10か月にわたって数か国を旅して100人以上の患者にインタビューして、がんから奇跡の生還を果たした患者さんたちの生き方をまとめたのです。

この本でとりあげているがん患者は重篤または末期といえるレベルで、無治療あるいは標準治療で効果がなかったのに自然治癒した人たちを対象としています。ターナー博士が発見した“9つの生き方”とは、(1)食事を劇的に変える(2)自分の病気に対する方針を自分自身で管理する(3)直観に従う(4)ハーブやサプリを使う(5)抑圧された感情を解き放つ(6)ポジティブな感情をもつ(7)社会のサポートに寄り添う(8)魂との結合を深める(9)生きるための強い理由を持つ・・です。ちょっとオカルティックな感じもあるけど・・

確かに過去数十年の文献を検索すれば彼女の言うように1,000例以上の“自然治癒(学問的には”がんの自然退縮“)”が報告されています。現在世界のがん死亡は年間10万人あたり約200人強、専門誌に報告されるチャンスのある先進国の人口を10億と仮定して推計すれば、がんの自然退縮はおおむね年間で重篤・末期がん患者1万人から10万人に1人くらいかなあ・・

報告をみると自然退縮が比較的多いがんとそうでないものがありそうです。肝臓がん、腎がん、悪性黒色腫などはよく報告されるがんの代表です。退縮するメカニズムもいくつか考えられています。(1)がん組織の血流が途絶える〜がん細胞は増殖に多量の血液を必要としているので、腫瘍に流れ込む血流が何かの原因で途絶したらがん細胞は破壊され、腫瘍は退縮します(既に肝臓がんの治療に応用されています)(2)それまで起動していなかったがん細胞を除去する免疫機構が何らかの刺激で起動し始める(この理論で新規薬剤が開発・実用化されています)(3)全身の炎症反応が生じてその結果がん細胞が除去される〜昔からさまざまな感染症のあとでがんが消失した、という報告があります。
ですからターナー博士の言うように、“生き方を変えるとがんが消失する可能性がある”というのはちょっとしんどいかな、と思います。やはり現象と因果関係は別物ですから・・もちろん博士は断定していないし、標準的な治療を否定しているわけではありませんけど、こういう結果はマスコミとかがとりあげて一人歩きするんだよな〜それが一番心配です。

そうは言っても、ポジティブに生きることや、生きる理由を持つのは悪くないなあ・・第一お金かからないし・・でも魂との結合深めるって・・どうしたらいいのでしょうね?!

posted by みみずく at 10:00| 2015年