2015年05月01日

歩く会は健康上の益がある・・


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あれっ、歩く会の宣伝?・・ではありません。今年1月に英国スポーツ医学雑誌という専門誌に掲載された論文の紹介です。翌月の著名な医学ダイジェスト雑誌に取り上げられていたので原文を読んでみました。

適度な運動を定期的に行うことが健康に良いことは既に実証されています。とくに時速4‐8km/hくらいの運動はお勧めのひとつです。しかし良いと分かっていてもできない人は山ほどいますよね。英国でも事情は同じみたいで、成人の29%は週に30分未満の運動しかしないし、4週間にわずか5分間!さえ続けて歩いていない人たちが8%もいるそうです。こういうものぐさな人たちに定期的に散歩させるのに良い方法のひとつに「戸外でグループ散歩に参加する」があります。ではこの“walking group”の本当の効果や、いかに?という研究が行われました。

論文の著者は英国ノーフォークの東アングリア大学ノリッチ医学校のサラ・ハンソン先生とアンディ・ジョーンズ先生、ハリウッド俳優のような名前のお二人。方法は今まで発表された“walking group”と健康上の利点を対象にした研究を7つのデータ・ベースを使って検索、5205件の論文を収集、さらに詳細な検討を加えていって最終的には一定の条件を満たす42編を対象としました。そこでデータをすべて合算して統計処理する、すなわち「メタ解析」という信頼性の高い研究手法を用いています。

さて解析結果ですが、“walking group” 総参加者数は1843人、合算した散歩時間は74,000時間、参加者の平均年齢は54歳(10歳勝っているというか、負けているというか・・)、うち74%は女性です。散歩時間は週あたり20〜460分、観察期間は3週間〜1年間とけっこうばらついています、

では注目の”walking effects”をあげてみると・・最高血圧−3.7mmHg、最低血圧−3.1mmHg、安静時脈拍は−2.9/分、体脂肪は−1.3%、BMI(体重/身長の2乗)−0.7、コレステロール−4.3r/dl、最大酸素消費量+2.7ml/kg/分、SF-36健康関連QOLスコア+6ポイント、6分間歩行距離+79.6mで統計学的に有意な改善があり、さらに「うつスケール」でも良くなっていました。一方、血糖やコレステロール以外の脂質検査には有意な改善は認められませんでした。また予想されたように、問題になるような害はありませんでした。

「効果って、その程度?!」とおっしゃる方があるかも知れませんが・・なかなかどうして、侮れない効果なのです。例えば最高血圧で3.7 mmHgの低下ですけど、2003年の100万人以上を対象としたメガ・スタディによると、わずか2mmHgの低下で脳卒中は10%くらい減少するとされています。3.7mmHgの低下は十分に意味のあるものです。逆に最高血圧が20mmHg上昇すると<140mmHgだったとしても脳卒中リスクは2倍になるとも報告されているので、話は合うのです。

“walking group” のもう一つの利点は、平均の脱落率が25%と、脱落者が少ないことです。4人のうち3人は続けることができるわけです。やっぱり一人で歩くよりみんなで楽しく歩けば長続きする・・ということですね。

・・ところで、今気がついたのだけど、ず〜とパソコンの前に座って文献読んで、散歩の効能を説く書き物をしている・・これってどうなんかなあ・・と思わないではないんだよな〜・・


posted by みみずく at 08:52| 2015年