2017年05月01日

“肝機能”の評価のためのガイドライン


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今までに一回も肝機能を調べたことがない、という方はまずいないでしょうね。肝機能は赤血球や白血球数などを調べる検血と並んで血液検査の基本中の基本です。人間ドックはむろんのこと、職場の健診でも必ず含まれていますし、診療所を受診したときにも「ちょっと血液検査をしてみましょうか」となれば、たいてい肝機能も行われるので、最も身近な検査のひとつといえるでしょう。

しかし時代の移り変わりとともに肝臓病も徐々に変貌していますし、新しい知見も集積されてきています。時代にあったガイドラインが求められるところです。グローバルな視点からは“ウイルス肝炎の時代から脂肪肝炎の時代へ”なのですが、日本はB型肝炎、C型肝炎の蔓延地域だったので、今でもかなりの患者さん(ほぼ中高年以降の年代)がおられて、今も治療や公的補償への注意を喚起する広報が続けられています。

昨年末に米国消化器病学が「異常肝生化学(liver chemistries)の評価についてのガイドライン」を発表しました。“肝機能(liver function)”と言う言葉を用いていません。それどころか「肝機能という名称は不適切」としています。肝機能の多くは障害を受けた肝細胞から血中に漏れ出た酵素の量を計測していることを考えれば、“肝機能”というより“肝細胞障害の程度”をみているので、それを踏まえて表現すべきだ、ということです。“お説ごもっとも・・・・・・”ではあるのですが、とりあえず本稿では、使い慣れた“肝機能”でいきたいと思います。

肝機能の基本となる検査はAST(旧名はGOT)とALT(GPT)、それにALPです。
AST、ALTは最も有名な肝機能項目なのですが筋細胞障害でも上昇するので、ときに筋疾患を除外する必要があります。AST、ALTを比べるとALTがより肝臓に特異的なので、「肝細胞の障害があるか?」という問いに対してはALTの値をみれば、そこに答えがあります。なおALPは肝臓ではなく骨疾患を反映する場合もあるのですが、たいていは肝臓で合成される胆汁の産生・分泌に関わる胆道系細胞の障害を反映しています。アルコールとの関連が良く知られているγGTPにもALPと同様の意義がありますが、肝臓疾患への特異性はそれほど高いわけではありません。

さてこのガイドラインによればALTの上限は男性で29〜33、女性で19〜25で、これを超えると「肝細胞障害あり」と判定します。ではなぜここに線引き(少し幅はあるのですが)が可能なのかといえば、これ以上のレベルでは「肝臓病関連の死亡リスクが有意に上昇する」からです。そのため、肝機能異常はたとえわずかであっても、その原因を明らかし、とり除ける原因はとり除く、ということになります。

では、たまたま検査を受けて異常が見つかったとき、次に何をするかというお話をしたいと思います。急性肝障害、すなわち高熱、黄疸、全身倦怠が突然出現!!というパターンは即刻入院して精査・治療ということになりますので省略します。ただ経口感染する急性肝炎についてひとつだけ……このタイプは貝類などの摂取によるA型肝炎が有名なのだけど、E型肝炎というのもあります。この病気はアジア・アフリカ地域からの帰国者くらいしか発症しないだろうと思われていたのですが、日本にも土着のE型肝炎が存在することが明らかになっています。原因として多いのがブタ・イノシシ・シカの生肉、生レバー摂取・・・・・・変わった生獣肉はやめときましょうね。

肝機能異常がみつかったら、押さえておくべきは日本ではやはりB型、C型肝炎ウイルスです。HBs抗原、HCV抗体検査でスクリーニングできます。HCV抗体は既感染・治癒でも陽性になり得るのでウイルス遺伝子の検査(HCV-RNA)を行って確認します。過体重・肥満、糖尿病、高脂血症など生活習慣病がある場合には、脂肪肝のスクリーニングのための超音波検査が必要です。また、アルコールが肝臓障害を起こす危険域は女性で週にエタノール換算140g以上、男性で週に210g以上とされていますので、毎日ビール1本、または他のアルコール飲料で同等量以上飲んでいる人は、まずは禁酒して肝機能の推移をみるべきです。

またALTの上昇があって、自己免疫疾患(最もありふれた病気は女性に多い橋本病/甲状腺機能低下症です)を指摘されている場合や、原因不明のALP上昇がある場合には、それぞれ適切な自己抗体などの免疫学的検査が必要です。

一番覚えておいて頂きたいことは、処方薬、市販薬、健康補助食品、漢方薬、サプリメント、ハーブ類など、“薬あるいはその類似物、または健康のために摂取している食事以外のありとあらゆるもの”は肝臓障害を起こす可能性があるということです。“これだけは大丈夫”という例外はありません。もし肝臓の問題でどこかに受診されるときには、忘れないで服用歴を申告してくださいね。


posted by みみずく at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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