2017年06月01日

ヒトはなぜ地上の覇者となり得たのか


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ヒトはなぜ地上の覇者となり得たのでしょうか・・・・・・なんてこともたまには考えるのです。単純に考えると、ヒト属は二足歩行ができたために両手を使うことができ、その結果脳が進化して、火と道具を使うことを学び、さらに知能が発達して、言語コミュニケーション能力を獲得し、ついに頂上に登りつめた・・・・・・でも何千万年前の巨大隕石衝突がなかったら、今ごろは遥か以前に二足歩行していた恐竜属が高等知能を獲得して地上を席巻していたかも(豊田有恒さんの小説「ダイノサウルス作戦」1978年)・・・・・・

さて、ヒトの進化は「原人→ネアンデルタール人→クロマニヨン人→現生人類」なんて図式を見たことがありませんでしたか?でも実際にはちょっと違うようです。最近のゲノム解析などの研究から、現生人類はネアンデルタール人の遺伝子を2%程度は受け継いではいますが(サイエンス誌2010)、直系の子孫ではないと考えられます。そしてネアンデルタール人は現生人類と共存した時代はあったのですが、彼らは数万年前に絶滅しました。

ネアンデルタール人の遺跡は19世紀半ばにドイツのとある洞窟で発見されました。考古学的調査から、彼らは石器と火を使い、死者を埋葬し花を手向けた痕跡が発見されています。かなりの文化水準に達していたようです。また、彼らの平均脳体積は1600ccで現生人類の1450ccを上回っています。それでも彼らは現生人類との生存競争に敗れ滅びました(米国科学アカデミー紀要2月号2016)。この原因としてネアンデルタール人は発声器官の構造上の問題によって言語コミュニケーションで現生人類に劣り、結局情報リテラシーの差で敗れた、とする考えが有力だそうです。

本当にそうかな?と私は疑問に思います。今年のネイチャー誌3月号に、ネアンデルタール人の化石の分析により、“歯槽膿漏をもつ個体だけが抗生物質と鎮痛成分を含む草木を食べていて、健康個体は食べていなかった”ことが示されました。これは「体の病気を治す成分をもつ草木が存在し、それは“病人”だけが食べる価値がある」という薬物療法の黄金則が理解されていたことを意味します。情報リテラシーが低いとは簡単に言えないと思うのです。

さて、現生人類は約20万年前の中央アフリカの一女性まで遡ることができる、という話、聞かれたことがありますか?この事実はカリフォルニア大学バークレー校のグループが行った、“万世一系の母系遺伝(母のみから子に伝わり、突然変異以外の遺伝子変異が生じない)”を示すミトコンドリアという細胞内小器官のDNAの解析で明らかになりました(ネイチャー誌1987)。この20万年前の“グレート・マザー”は「ミトコンドリア・イブ」と呼ばれています。やはりネアンデルタール人と現生人類とは活動した時代は確実にかぶっているのです。

ここでヒト属全体を見渡すと、根本的には何がこれほどまでに知能を進化させたのか?という疑問があります。ネアンデルタール人のデータから、単純に脳体積=脳重量=神経細胞の数とは言えないようです。「だったら、何か、それは脳血流だ」という論文が昨年豪州のグループから「王立協会オープン・サイエンス誌」に報告されました。曰く、「類人猿から現生人類に至るまで300万年の頭蓋骨化石から内頚動脈のサイズを検討すると、脳体積は3.5倍に増加しているが、血流は6倍に増加している。この血流増の増加=神経細胞ネットワークの代謝の増加こそヒトの脳の進化の根幹である」・・・・・・

これは“奇跡の進化”であったのかも知れません。というのは、生物進化の大原則である「クライバー則」によれば、生物のサイズが大きくなればなるほど、単位体積あたりのエネルギー消費は低下するのが常識だからです。ところがヒト属の脳はサイズが大きくなっても、それを上回るエネルギー消費の増加がみられたということになります。この極めて例外的な進化の結果である脳血流の増加が、地上の覇者を決めたのかも知れません。

となれば、ネアンデルタール人が現生人類に比べて劣っていたのは脳血流だという仮説が成り立ちます。もしそうだったとして、現生人類が血流量の増加によってネアンデルタール人より優位に立った能力は何だったのでしょうか。情報リテラシー、言語コミュニケーション能力、そうだったのかもかも知れません。しかし上述のごとくネアンデルタール人は“優しい文化”を持っていました。・・・・・・ひょっとしたらネアンデルタール人は現生人類より“優しさ”で勝り、“冷徹”で劣っていたとしたら・・・・・・“優しさ故に滅ぶ”ということには空しさを 禁じ得ませんが、ありがちだとも思うのです。
posted by みみずく at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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