2017年11月15日

“夢見る頃”を過ぎると認知症リスクが高まる?!


片桐先生1.jpg
夢/dreamという言葉は良いですね〜響きが何とも言えません。ところでみなさんは「夢であいましょう」というテレビ番組を覚えていますか?1961年4月から私たちが三丘に入学した1966年4月までNHKで放映されました。「今月のうた」というコンテンツがあり、そこで「上を向いて歩こう」、「遠くへ行きたい」、「おさななじみ」などの名曲が生まれました。一方、米国で“dream”と言えばキング牧師です。彼は1963年のワシントン大行進の折、「I have a dream today !」と演説し20万人の聴衆を興奮の坩堝へと誘いました。そうそう、かのウォルト・ディズニーも「If you can dream it, you can do it.」とおっしゃったとか・・・・・・

「夢」は“期待と不安がないまぜになった将来の願い”という意味で使われることが多いのですが、医学生理学的には“睡眠中に生じる脳細胞活動のひとつの表現”です。今回は睡眠中にみる夢と認知症リスクとの関連についてのお話です。

ヒトは人生の三分の一を睡眠に費やします。乳児期には一日の半分は寝ていますが、歳をとるにつれて睡眠時間は短くなります。睡眠には構造があり、「レム(REM:早い眼の動きを伴う)睡眠」と「ノンレム(早い眼の動きがない)睡眠」に大別されます。レム睡眠では、脳波をみると覚醒状態に非常に近い波形を示し、骨格筋は弛緩しているのですが脳は活発に活動していて(だから“金縛り”が起こることも・・・・・・)、交感神経も活性化して血圧や脈拍も上昇し、高頻度に“夢をみている”状態です。一方、ノンレム睡眠は、脳波の特徴から「徐波睡眠」とも呼ばれ、睡眠深度が深くなると血圧や心拍数・呼吸数は低下します。まさに“夢も見ずに深く眠っている”状態です。

睡眠の意義は完全には解明されてはいませんが、脳神経細胞のネットワークや記憶回路のメンテナンスに重要な役割を果たしていると推測されています。睡眠が記憶に関連しているのなら、記憶障害が主症状のひとつである認知症との関係はどうだろうか、という興味がわいてきます。もちろん従来からさまざまな研究がされていて、とくにノンレム睡眠の比率と深度と認知症の関連を検討したものが多かったのです。ところが最近、レム睡眠と認知症との関連についての論文が発表されて注目を集めました。

発表したのはオーストラリアのグループで、60歳以上の321名(平均年齢67±5歳、男女比1:1)を対象にして自宅睡眠ポリグラフ(睡眠中の脳波、呼吸運動、心電図、眼球運動、四肢運動などを記録する解析機器です)による睡眠パターンの検討とともに平均12±5年、最長19年間観察し認知症発症リスクを解析しました(ニューロロジー, 2017)。観察期間中に32例が認知症を発症し、うち24例がアルツハイマー型でした。睡眠にレム睡眠が占める割合が少ないほど、またレム睡眠に至る時間が長いほど認知症リスクは高まり、睡眠時間にREM睡眠の占める割合が1%低下すると、なんと認知症リスクが9%上昇しました。なおノンREM睡眠の深度と認知症リスクとの関連は認められませんでした。
 
この研究結果は、「レム睡眠と夢の関係」が強調されて、“夢をみなくなると認知症リスクが高まる、という研究成果!”としてメディアで話題になりました。もちろん夢をみなくなることが認知症の直接の原因になっているとは思えませんが、ひょっとすると「最近夢をみなくなったな〜」ということは、認知症リスクが高まっている!という危険信号なのかも・・・・・・

だったら、どうしたら良いか・・・・・・科学的根拠はないのですが、“幾つになっても夢を追いかける”というのは良いかもの知れませんよ。「それは夢の意味が違うだろう」というご指摘はもっともですが、“夢を忘れないことが脳の老化を防ぐ”・・・・・・何だかありそうな気がするのです。どうせ他に良い予防法もないことだし・・・・・・

臨床研究には過去のデータを振り返って検討する「後方視的研究」とこれから未来に起こるデータを集めながら検討を進める「前方視的研究」の二通りのやり方があるのですが、一般に「前方視的研究」の方が、評価が高いのです。やっぱりね、幾つになっても“前向き姿勢”が大事だと思うのです。ひょっとすると「過去は忘れて、まっすぐ未来だけを見つめる」というのが “老化しない秘訣”なのかも知れませんよ。あっ、でも過去のことを片っ端から忘れていくのは、それはそれでやばいのかも・・・・・・
posted by みみずく at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/181286298
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック