2018年10月15日

“風呂は命の洗濯”のエビデンス

片桐先生2.jpg
ある有名アニメの中で「風呂は命の洗濯よ〜」というセリフがありました。疲れた後など、ほんとうにそのとおりだな〜と思いますね。もちろん、世界中どこでも日本のように、ゆったりと湯船に浸かる・・・・・・という国ばかりではありません。格別水事情が悪くなくとも、ホテルの部屋はシャワーだけ、というところも少なくないようです。それはそれで不便というほどではないのだけれど、やはり何か物足りませんね〜とはいえ、私はどちらかといえば“カラスの行水”だから、たとえ立派な“檜風呂”とか“岩風呂”とかでも、大して変わりはないのですが・・・・・・

温泉大国ニッポンでは、昔から入浴の健康に対する効用については各地で言い伝えられてきました。“湯治”という言葉もありますしね。それ以上に日本では入浴は一種の文化でした。もっとも“銭湯の文化”は“時代は遠くなりにけり”ですけど……銭湯文化を歌っている南こうせつさんの「神田川」は今でもよく耳にしますけど、実感がない人も増えているでしょうね。

医学研究の世界においても入浴の効用についての科学的根拠が報告されるようになったのはつい最近のことです。やはりこの分野を牽引するのは日本をはじめとする温泉大国の研究グループです。最近の報告をみますと、まずサウナ浴(sauna bathing)の効果についての報告が国内外からされました(米国心臓病学会誌:富山大学2012、米国医師会雑誌・内科学:東フィンランド大学2015、日本循環器学会誌・英語版;和温療法研究所2016)。なお「和温療法」というのは鹿児島大学名誉教授(現和温療法研究所)鄭 忠和先生が開発された“サウナ浴15分+安静保温30分+水分補給”からなる心不全などに対する日本発の入浴治療法です。これらの臨床研究は、サウナ浴には心血管疾患の死亡率の低下や、心不全患者の運動能力改善などの効果が期待されることが示されています。

では、私たちが日常普通に行っている入浴(hot water bathing)には効果はあるのでしょうか?この観点から研究を行った愛媛大学のグループの論文が最近発表されました(サイエンティフィック・リポーツ 2018)。対象は同大学の“抗加齢・予防医療センター”の人間ドックの受診者873名(平均年齢約66歳、男女比=4:6)で、入浴に関するアンケートを行う一方、動脈硬化指標として「超音波による頚動脈内膜中膜厚」と「上腕足首間脈波伝搬速度」を測定、また「中心血圧(大動脈起始部での血圧:普通に測定する血圧よりも低く、その質も異なっていて、臨床研究の評価項目としてより適正だとする意見があります)」の推定値を橈骨動脈(ふつうに脈をとる場所です)圧波形から求め、さらに心臓負荷の指標として血液中B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP:既に心機能を簡便に知る血液検査として定着しています)を測定しています。

さて、結果ですが、一回あたりの入浴時間は最長120分、平均12.4±9.9分でした。1週間あたりの入浴回数最多はなんと24!回(この方は道後温泉近くにお住まいかと推察します)で平均回数は5.8±1.9回でした。湯の温度については熱め(41℃<)は約13%、多くの人は中間温度(40−41℃)かぬるめの温度(40℃>)で入浴していました。入浴の効果について要約すると、「週5回以上の人は、4回以下の人に比べて動脈硬化指標、中心血圧、心臓の負荷、いずれもが低くなる。なお2回以上データがとれた対象者164人でみると、週5回以上の入浴者では経年的変化でも良い傾向がみられる」ということでした。

以上の結果から、効果を期待するなら週5回以上は入浴した方が良さそうです。動脈硬化を遅らせ、血圧を下げ、また心臓に対する負荷を減らせる、となれば値打ちがありそうですね。なお湯の温度については、“熱め(41℃<)”の方が、より高い効果が得られそうなのですが、これについては、著者らは「さらに検討が必要」としています。風呂が嫌いじゃなかったら毎日入浴、で良さそうです。湯の温度については、今のところ個人の好みに合わせれば良いのではないでしょうか。

この入浴に関する研究、日本では大いに発展しそうです。“有○温泉VS草○温泉”とか“天然温泉VS温泉の素”とか・・・・・・でも大規模研究ともなれば時間もお金もかかるからな〜実際にやるかどうかは、温泉にでも浸かってゆっくり考えてからかな。

以上のように“風呂は命の洗濯”はあながち間違いではなさそうです。一方、入浴して“極楽、極楽〜”という良いながらリラックスする、という場面もよく目にするのですが、入浴と心血管病の予後について検討を加えてきた立場から言うと、「極楽」を連呼するのは、いかがなものかと思うので、やはり“命の洗濯”としておきましょう・・・・・・




posted by みみずく at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/184431830
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック