2019年05月01日

“フレイル”が認知症発症の鍵を握る?!


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歳をとるにつれて、さまざまな病気のリスクが増加するのは、仕方のないことなのですけど、「認知症のリスク」は嫌ですね〜現時点で約500万人、2025年には何と700万人を超えると予測されています。何とかなりませんかね〜

認知症の中核を占めるのが「アルツハイマー型認知症(AD)」です。ADの脳内で何が起こっているかについてはかなり分かっていて、“著しい神経細胞の脱落と、細胞外のアミロイドβ蛋白の沈着、そして細胞内でのリン酸化されたタウ蛋白の蓄積”が典型的な顕微鏡的な病理学的所見です。これらの病変が、どのようにして“ドミノ倒し”のように病変部周囲の正常組織を侵食し、進行していくのかについては、多くの研究者がその解明に取り組んでいるのですが、未だ明らかではありません。

また、ADにはもうひとつ大きな謎があります。病理所見と臨床症状が大きく解離することが稀でないことです。すなわち、生前ほとんど認知症状を示していなかった人が他の病気で亡くなって剖検すると、脳に著しいアルツハイマーの病理所見が見つかる、また逆に明らかな認知症状を示していたのに剖検での病理所見がごく軽い、などということがしばしば経験されるのです。このような現象は、アルツハイマー型認知症に特異的ではありませんが、他の多くの疾患では病理所見と臨床症状の程度は、たいていの場合ほぼ一致します。

すなわち、ADにおいて脳に起こる病理学的変化は、この病気の成り立ちに深く関わっているのは疑いないのですが、実際に認知症の症状が出現する(=日常生活において支障がでるレベルの症状がある)ということとは必ずしも直接結びつかず、その間を繋ぐ、あるいは調節する因子が介在する、という可能性が考えられます。

ではどのような因子が考えられるのでしょうか?遺伝的な“症状の起こりやすさ”、合併する身体疾患や病態(たとえば糖尿病や感染症など)・・・・・・など要因が多すぎて整理するのにも一苦労です。しかし最近“歳をとること”と密接に関連するひとつの病態が大きな役割を果たしている可能性がある、とする研究論文が発表されました(「ランセット・神経病学 2019年1月号」)。

この論文の著者らが言うには、「鍵を握るのは“フレイル(frailty)だ」とのことです。フレイルについては、このブログでも2016年11月15日分(第43回)で紹介しています。すなわちフレイルとは“加齢とともに心身の活力低下し、生活機能が障害され、心身の脆弱性が増した状態”で、その診断基準を再掲すると、「@半年で2-3s以上の体重減少A握力低下;男性<26s、女性<18sBここ2週間のわけもなく疲れた感じC通常歩行速度<1.0m/秒D軽い運動・体操もせず、定期的な運動・スポーツもしていない、のうち0項目該当が“健常”、1-2項目該当なら“プレフレイル”、3項目以上で“フレイル”」とされています(@については年間≧4.5kg、または≧5%、Bについては、週3−4日は何をする気も起こらない、とする定義もあります)。

さて、上記ランセット誌の論文では60歳以上の米国イリノイ州の住民を対象として(登録時認知症なし)、毎年精神神経学的評価と臨床的評価を行い、最終的に死亡時に剖検を行うことができた456人から得られたデータを解析しています。最終のメディカル・チェックでフレイルの程度が軽かったグループと重かったグループで、ADの病理学的所見の変化の強さ(軽度、中等度、高度の三段階)と実際に認知症の症状があったか否かの関連を検討するとフレイルの程度によって顕著な差が現れたのです。

フレイルの程度が軽いと、脳の病理変化が軽度なら認知症症状を呈した割合はわずか3%、中等度変化で30%、高度の病理変化があっても認知症症状は67%に止まりました。一方、フレイルの程度が強いと、軽度の病理変化を示していても69%に認知症がみられ、中等度変化で74%、高度の変化では78%に認知症がみられたのです。また、フレイルの程度が強くなるに従って、脳の病理変化も強い人が多くなる傾向もみられました。

この研究が正しいとするならば、脳でADの病理学的変化が起こっていても、健常な心身活動状態を維持している、すなわち心身の脆弱性=フレイルと無縁であるのならば、認知症の症状が出現しにくくなるかも知れない、ということになります。“フレイルからできるだけ距離をおいて歳をとること”が認知症対策に極めて有用なら、健康的な日常生活の維持や身体疾患の適切な管理はとても重要と言えるでしょう。

率直に言って、元気な時の“フレイル対策”は、さほど問題ではありません。持病さえしっかり管理しているのなら、日々を今までどおり楽しめば良いと思います。問題は大きな病気になった後です。それによって心身の活動性が低下した時こそ正念場・・・・・・ここが人生最後?!の頑張りどころかも知れません。
posted by みみずく at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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