2018年01月15日

飲酒と喫煙は外見を老化させる!?


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可視性年齢関連徴候、すなわち“見た目の老化徴候”は生物学的年齢に相関し、これらの早期出現は“実年齢に比べて不健康な状態にある可能性”を示唆するという考えがあります。一方、飲酒や喫煙はさまざまな加齢にも関わる疾患のリスク・ファクター(RF)であることは周知の事実です。そこでデンマークの研究者のグループは、飲酒と喫煙が“見た目の老化徴候”と関連しているか否かについて検討して「疫学と地域健康誌」2017年12月号に発表しました。

この研究の対象はコペンハーゲン在住の111,613人で研究期間は1976〜2003年、この間飲酒・喫煙の状況やその他のライフスタイルについての聞き取りを行ない、加えて“4大加齢関連徴候”を調査しています。なお週当たりの平均飲酒量は女性でグラス2.6杯、男性で11.4杯、喫煙者の割合は女性57%、男性67%でした。別の大規模疫学研究のデータを用いているので調査年代が少し古く、喫煙率は今と比べてずいぶん高めになっています。

さて、この研究で調査された“4大老化徴候”とは@角膜環(黒眼と白眼の境目にできる灰白色のリング状のゾーン、A眼瞼黄色腫(上まぶたにできる黄色の結節)、B耳たぶの深いヒダ(耳たぶの後下方に走るヒダ)〜「フランク徴候」ともいいます。@〜B、思わず鏡をみてしまいそうでしょう?C男性型禿頭〜英語ではmale pattern baldnessというのだけど、androgenetic alopeciaという言い方もあって略称AGA、こちらの方はテレビのコマーシャルで耳にしたことがあるかも・・・・・・

では、これら4徴候がRFとしてそれぞれどのように評価されているかということについてですが、@角膜輪は、男性の心臓血管病において他のRFとは独立したRFとする報告があります(米国眼科学会誌2017)。Aの眼瞼黄色腫は高脂血症、とくに高コレステロール血症との関連がよく知られているのですが、脂質異常のない人にもしばしば見られるので、健診などで脂質測定が広く行われている日本ではRFとしての価値はそれほど高くはありません。Bの耳たぶのヒダについては、脳血管障害で入院した患者さんで検討すると、一過性脳虚血より脳梗塞において、より多く見られたとする報告があります(米国内科学会誌2017)。Cの男性型禿頭については早期に始まる人では脳血管疾患やメタボリック・シンドロームのリスクが高いとのことです(ブラッド・プレッシャー誌2016)。しかし男性型禿頭は欧米人のみならず日本人でも若くてもざらにあるし、他の老化徴候とはちょっと違うような・・・・・・いずれにしても@〜Cとも、多少の報告はあるけれども、それほど強いRFではありません。

さて、デンマークの研究に話を戻します。結論として、喫煙量が増えるに従って、@〜Bの徴候が出現するリスクは増大しました。飲酒量に関しては、大量飲酒者で@とBの出現リスクが増大していましたが、少量〜中等量の飲酒は影響しませんでした。要するに、喫煙と多量の飲酒は、見た目の老化徴候を起こしやすくなる可能性があるということです。とくに「角膜輪」と「耳たぶのヒダ」とは顔の老化を特徴づける代表的な徴候だから、「やっぱり幾つになっても若く見られた方が良いな〜」と思う人は、もしスモーカーなら禁煙して、お酒も控えめにしてくださいね。「それで絶対、見た目若々しくなるの!?」と言われても困りますけど・・・・・・「タバコも吸わないし、お酒も飲まないのだけど、どうしたら良いの?」とおっしゃる方、いや〜きっと周りの人たちは、あの人若いな〜と思っていますよ〜(ちょっと無責任になっているけど)

余談ながら、予想どおり喫煙・飲酒関連老化徴候としては相関に乏しかった「男性型禿頭」だけど、イタリアのグループが2017年8月に「国際皮膚科雑誌」に「過体重と喫煙量増加が組み合わさると男性型禿頭が悪化する」という研究報告を行っていました。こちらの方は、やはり老化というよりメタボリック・シンドロームとの関連の方が深そうです。

とりあえずは、若く見えたほうが良ければ、飲酒は控えめに!・・・・・・日本の基準では「多量飲酒者」というのは1日あたり純エタノール換算で60ml(ほぼ日本酒3合またはビール中瓶3本)以上とされているのですが、ちょっと甘すぎ・・・・・・せいぜい40mlまでが無難かな〜

結局のところ“年齢を経ても見た目若々しくあるには、禁煙してお酒も控えめに”というごく常識的な結論でした。あまりにも意外性がなさ過ぎる結論ではありますが、やはり「健康に王道なし」ということでしょうね。
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2018年01月01日

やっかいな“無症状のインフルエンザ”

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あけましておめでとうございます。同期のみなさまには恙なく新年を迎えられたことと存じます。もっとも私のように“恙なく”とは言えない方もいらっしゃるでしょうが・・・・・・。

さて今年もインフルエンザの季節がやってきましたね。ここにきて患者さんの数も増えつつあるようです(もっとも、この原稿は11月に書いているので、ほんとうのところは分からないのですけど)。インフルエンザの最大の特徴の一つに強力な伝搬力を挙げることができます。とにかく流行しやすいのです。病院など健康でない不特定多数の人が出入りする場所はとくに注意が必要なのですが、意外にやっかいなのは「軽症・無症状のインフルエンザ患者」です。何しろ本人の自覚がないので、感染源としては、つい“ノーマーク”になりがちなのです。

さて、この軽症・無症状のインフルエンザ、普通のインフルエンザを比べて、どのような特徴があるのでしょうか。本当に感染源になり得るのでしょうか。この問題について検討した研究はそれほど多くありません。その中から、比較的日本に近いエリアで行われ、2017年5月に「臨床感染症(オックスフォード大学出版局)」に発表された論文を紹介します。この研究は2008年から2014年にかけて香港で行われた“地域密着型研究”で、「確実にインフルエンザ(A香港型)と診断された人と家庭内で接触し、研究にエントリーした時には健康であった人」を対象にしています。対象となった人たちに毎日体調・症状の記録をつけてもらって、インフルエンザウイルスの排出状況も調べていく、という方法をとっています。

この方法により家庭内でインフルエンザに二次感染した患者さん235名が特定されました。これらの患者さんは症状によって以下の3群に分類されています。@有症状インフルエンザ(37.8℃以上の発熱、頭痛、筋肉痛、咳、咽頭痛、鼻汁、喀痰のうち、二つ以上の症状がある人)A軽症インフルエンザ(@に挙げた症状が一つだけ認められた人)B無症状インフルエンザ(上記症状が全く無かった人)・・・235名のうち、軽症例は31名(13%)、無症状例は25名(11%)でした。すなわち家庭内で二次感染した人のうち、4人に1人は症状がほとんどないか、または全く無症状だったことになります。

ではこの軽症例・無症状例はインフルエンザウイルスを排出していたのでしょうか。答えはyesでこれらの患者さんもまたウイルスを排出していました。ただし有症状例に比べると、ウイルス排出期間は短く、かつ急速に排出が減少・消失する傾向にありました。結局のところ、軽症例・無症状例のウイルス排出総量は有症状例の10〜100分の1程度でした。

とはいえ、この研究はごく軽症の患者や無症状のインフルエンザ患者においても、少ないながらもウイルスが排出されていて感染源になる可能性を示唆しています。いくらウイルス量が少なくとも、家庭内や閉鎖空間での接触があれば感染が成立する可能性は十分あると思われます。よく「インフルエンザが流行していますので、外出時はマスク着用、帰宅時には手洗い励行してください」という注意が促されますが、家にいてもマスクが必要!?となればちょっと大変です。それに実際のところ、これらの感染対策で軽症例・無症状例インフルエンザによる伝搬がどの程度防げるかについてはよく分かっていません。それを検証するには、かなりの労力と費用が必要なので実施は難しいかも・・・・・・

この研究結果からみても、「インフルエンザ対策は一筋縄ではいかない」と言わざるを得ません。インフルエンザ流行期には病院でも「どこから入ったか分からないインフルエンザの集団発生」がしばしば見られます。ここに軽症・無症状インフルエンザ患者さんが関与していても不思議はない、と思いますし、これらの患者さんがパンデミックに一役かっている可能性は十分ありますね・・・・・・

さて、では何ができるか、ということになると、流行期前のワクチン接種に加えて、流行期の「手洗い・マスク」くらいしか思いつきません。むろんワクチンやマスクの効果を科学的根拠に乏しいとして疑問視する意見もあります。でもね、やはり現時点では“やらないよりはマシ”かな〜しかし海外ではマスク着用の習慣がない国も少なくありません。むしろマスクしていると“怪しい人物”と判断される場合もあるそうな・・・・・・インフルエンザ流行期でも海外ではその国の状況を確かめる方が良いかも知れません。“郷に入っては郷に従え”というやつですね。

では今年もお暇なときにおつきあいください。

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2017年12月15日

“表情”というイヌたちの戦略


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今回は動物ネタのお話です。ほとんどの哺乳類には“顔の表情”があることが知られていますが、これらは“能動的なコミュニケーション・ツール”というよりむしろ、“意図的ではない感情の表出”であると考えられてきました。むろんヒトの古き良き友人であるイヌにしてもその例外ではありません。ところが最近、飼い犬の顔の表情は、飼い主と意思疎通を図ろうとする積極的な意図によるものである可能性を示す研究が発表されました(サイエンティフィック・リポーツ 2017年10月号)。

この研究を行ったのは英国ポーツマス大学のグループで、彼らはこの研究に「顔面動作コーディング・システム(Facial Action Coding System FACS)」を用いています。この顔の表情のFACS解析、40年の歴史をもつ技法で、“顔の表情は解剖学的に独立し、視覚的に識別可能な表情動作の最小単位=動作単位(action unit :AU)によって構成されていて、これらを観察・分析することで非言語的コミュニケーションの一端が明らかになる・・・・・・”
とのことです。そこで著者たちは飼いイヌを対象として、ヒトが注目する場合としない場合、食べ物がある場合とない場合について、FACSでイヌの表情の変化の頻度と現れる動作単位の特徴を解析しました。

結果はなかなか興味深く、イヌはヒトから注目されている時により頻繁に表情を動かすのですが、食べ物は表情変化に影響しませんでした。このことは“社会的コミュニケーション刺激”であるヒトの注目はイヌの表情に大きな影響を与えるのですが、イヌにとって“興奮を呼び起こすものではあるものの、非社会的な刺激”である食べ物には、表情に対するインパクトがない、ということを意味します。すなわちイヌの顔の表情は、単なる意図的でない感情の発露というよりむしろ、ヒトに対する意図的なコミュニケーション・ツールである可能性があるのです。

イヌがヒトに対して最もよく使う表情、すなわち“得意技”が“inner eye brow raise”という動作単位で、“眉頭を上げて目を大きくして子犬のように可愛く見せる”という表情である(思わず自分でやってみた方は好奇心旺盛かつ実証主義的な方ですね)。ヒトが注目していると、この動作単位の出現頻度は倍以上になります。なお、このような動作は生物学的には“幼形保有”というカテゴリーに入るとされています。すなわち“幼い頃の姿・形、動作を再現して愛嬌を振りまく”という行動で、平たく言えば“ぶりっ子”ですね。この手段、イヌ・ヒト間では非常に有効のようです。でもヒト・ヒト間では・・・・・・時と場合によるだろうな〜しばしば“気味が悪い”と捉えられて逆効果のことも稀ではないでしょうね。

さて、この研究結果に対する私の感想は「イヌたち、なかなかやるじゃないか」である。ひょっとしたら飼い主に愛嬌を振りまいて立場を良くする、という立派な戦略的意図に基づく可能性も無きにしもあらずです。また最近、ネコの人気が高まってきていて、ネコ番組の放映が多くなっています。あるいはイヌたちも危機感を持っているのかも・・・・・・もしみなさんがネコ番組を視聴していると飼い犬たちが一生懸命“inner eye brow raise”でアピールしているかも知れませんよ、ぜひ注目してあげてください。

また私は“inner eye brow raise”に対する飼い主側の反応としての表情変化についても興味があります。きっとFACS解析に値する変化がみられるかも知れません。加えて声も優しくなったりして・・・・・・“ネコ撫で声”ならぬ“イヌ撫で声”ですね。

さて、年内のブログはこれでおしまいです。今年一年、おつきあい頂きましてありがとうございました。今までもそうなのですが、たまには一般科学ネタとか動物ネタとか、医学に関係しないジャンルのブログも書いてみたいと思います。まあ、“箸休め”ということで・・・・・・お暇なときには、また読んで頂けたら嬉しいです。

では、10日ほど早いですが、Merry Christmas! そして良いお年を。

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